2018.4.20
アルミの表面処理
アルマイト処理とは
1.アルマイト処理とは
アルマイト処理とは、別名陽極酸化処理とも呼ばれる、アルミニウムを陽極(+極)で電解処理をして、アルミの表面に人工的に酸化皮膜(アルミの酸化物)を生成させ、特性を向上させる表面処理のことです。アルミニウムは物質特性上、酸素と結びつきやすい性質を持っているため、空気に触れていると非常に薄い酸化被膜を生成します。ここが鉄と大きく違うポイントなのですが、アルミはこの自然に作られる被膜によって保護されるので、一般的に錆びにくい、いわゆる耐食性が良いと言われる所以です。しかし、この酸化被膜は非常に薄いので、酸性が強い場所など、環境によっては化学反応を起こし腐食してしまいます。そういった外的要因から表面を保護する表面処理が必要となってきます。その代表的な表面処理が、アルマイト処理、というわけなのです。
2.アルマイト処理の分類
アルマイト処理は、大きく①白アルマイト、②カラーアルマイト(着色アルマイト)、③硬質アルマイト、の3つに分類されます(なお、カラーアルマイト処理を行うと赤や青などカラフルな色を持たせることができますが、その中には、工業的に頻繁に使われる黒アルマイトも含まれます)。
(1)白アルマイト
アルマイトの中で、ごく一般的なのが白アルマイトです。アルマイトは、アルミの表面を侵食し浸透被膜とアルミの表面に成形される成長被膜の両方からなります。
(2)カラーアルマイト
既に述べた白アルマイトは形成される被膜が薄いので、寸法変化はほとんど見られません。しかし、カラーアルマイトはその後に染色するので、少し寸法が変化します。一般的には、0.01~0.02mm程度となります。カラフルな色を付けることができるカラーアルマイトは、工業的なものよりも、意匠性を重視されるインテリアや雑貨などのアルミニウムに使用されることが多くなっています。また、黒アルマイトも分類上はカラーアルマイトに含まれます。
(3)硬質アルマイト
硬質アルマイトに関しては、白アルマイトやカラーアルマイトに比較すると膜厚が厚くなるのが通常です。これは、硬質アルマイトのそもそもの目的が、表面の硬度を上げ耐摩耗性を向上させることを目的とした表面処理方法だからです。
硬質アルマイトの場合、被膜が形成されるイメージは上記の図で説明することができます。まず、アルマイトの被膜は「浸透被膜」と「成長被膜」とに分類されます。そして、例えば「このアルミの表面に50μmのアルマイトの膜厚を形成させたい」といった場合には、「成長被膜」と「浸透被膜」の割合は約1対1となりますので、100μmの硬質アルマイト処理が必要となります。
なお、硬質アルマイトは、摺動部などの耐摩耗性が要求される部品などに多く使われ、白アルマイトと同様に多くの工業製品向けのアルミの表面処理として広く採用されています。
3.アルマイト処理の豆知識
ここまでアルマイト処理について述べてきましたが、実は、どんな種類のアルミニウムを使うかで、仕上がりなどが異なってきます。アルミニウムを使った製品を多く設計し採用しているエンジニアにはごく一般的なことかも知れませんが、知らずにアルマイト処理をしてしまうと、あとで後悔……ということも無きにしもあらずです。
(1)アルマイトに適したアルミ
アルミニウムの素材の中で、一番硬質アルマイトに適した素材は、5000番系のアルミ合金になります。5000番台のアルミは、例えばA5052などが代表的なアルミニウムになりますが、硬質アルマイト処理には一番適しているのです。次いで、6000番系のアルミ合金が硬質アルマイトに適した素材となります。なお、硬質アルマイトは上記のとおりですが、通常の白アルマイトは、材質による大きな差は問題にならないことが多いです。このように、アルミニウムの使用用途、およびアルミニウムの材質によっては、どんなアルマイト処理を施すか、吟味する必要があるのです。
(2)アルマイト処理後、変色するケース
アルマイト処理を行い、わざと表面の色を変えるのはいわゆるカラーアルマイトになりますが、一般的な防錆を目的に採用される白アルマイトはどんなアルミにも何の問題も無く使えるか、といえば、実はそうではありません。たとえば、A2017に対して白アルマイト処理を行うことは可能でが、表面が灰色になってしまいます。内部機構の部品として採用するのであればまだしも、これを外装品に採用するとなれば、トラブルの原因となる事もあるので注意が必要になります。
(3)ほか、アルマイトを採用する上での注意点
このほか、例えばアルマイト処理を施しにくい形状というケースもあります。おおよそ穴径がφ3程度と小さいと、アルマイトが乗りにくい、といったことが発生します。また、高い寸法精度を要求されるアルミ切削加工品に硬質アルマイトを施す場合は、寸法管理が特に重要になります。硬質アルマイトは膜厚が厚くなってしまうということが原因です。なお、白アルマイトは膜厚が薄いので、寸法精度が厳しい製品であっても大きな影響が出るケースは少なくなります。
このように、表面処理のアルマイトひとつとっても様々な種類があり、特性と特徴を押さえておくことが製品の品質向上に繋がります。アルミ切削.comを運営するカジテックでは、タッピングセンタで切削するような小さなアルミ切削品から、3000mmを超す大型のアルミ切削品などを、門型マシニングセンタなどを使用して切削を行っているので、これらの製品のアルマイト処理を日々行っています。大きなものから小さなことまで、切削からアルマイト処理まで一貫で任せられるのが、アルミ切削.comの特徴なのです。